前のページに戻る

2019-06-11松尾龍之介氏 来訪

見聞録? いや聞見録

珈琲の話 本文
松尾氏がご覧になった「珈琲の話」本文
珈琲の話 表紙
表紙

何年か前、漫画家の松尾龍之介氏が当店に立ち寄られたことがあります.その時のお話です。

 かうひい屋には、「珈琲の話」と題した小冊子を作ってカウンターに置いていました。その第1ページには、「『かうひい』の店名は江戸時代の広川獬著「長崎見聞録」によります。」と書いていました。

 しかし後ほど「長崎録」ではなく、「長崎録」であることが分かりましたが、忙しさにかまけて、そのままになっていました。

「珈琲の話」原稿: その当時の「珈琲の話」の原稿が見つかりましたので、上に掲載しました。ご笑覧下さい。


『江戸の<長崎>ものしり帳』
江戸の<長崎>ものしり帳

 同じ頃、歴史家のお客様から、「『長崎聞見録』を解説した『江戸の<長崎>ものしり帳』という、漫画入りの分かりやすい本が出てますよ。著者は松尾龍之介という人で……」と教えてもらいました。


ご本人だったとは

 さらに同じ頃……。

 一人の紳士がお客様としておいでになりました。その方はコーヒーを飲みながら『珈琲の話』を手に取られていましたが、しばらくして私に、
「この『長崎見聞録』ですね……」と声をかけられました。
「『録』ではなくて、『録』なんですよ」

 迷いなく指摘なさったその言葉に、専門家の威風を感じて 「ええ、実は、少し前から分かっていたんですが、」と、言い訳をしつつ、思わず「そういうことにお詳しいお客様は、専門家でいらっしゃいますか?」と突っ込んでしまいました。

紳士は笑いながら
「実は私は、長崎聞見録について『江戸の<長崎>……』という本を書いていまして……」
「おお、その本のことは聞いています、ご本人でいらっしゃいますか」
歴史家のお客様から、話に聞いていた松尾龍之介氏でした。

解体新書
解体新書

長崎市にお住まいの松尾氏は、かうひい屋近くの九州国立博物館に江戸時代の「解体新書」の展示を見るためにおいでになり、かうひい屋に立ち寄られたのでした。 「『解体新書』のインパクトは,豊富なイラストの力も大きい」と、絵の専門家らしい感想を述べられていました。

 その日は、歴史家のお客様に急遽連絡し、松尾氏にもお帰りを待っていただいて、夕刻に軽い酒宴で歓待したのでした。

 後日、「江戸の<長崎>ものしり帳」をサイン入りで送っていただいて、「長崎聞見録」のコーヒー以外の記事も知ることが出来、気分だけはなじみ深かった古文書が、より身近になった出来事でした。

自分を誉めてやりたい

 松尾氏は「聞見録じゃないかな?」や「聞見録だと思いますよ」ではなく「聞見録なんですよ」と仰いました。その言葉付きに私はプロを感じ、「専門家の方……?」と聞き返すことになりました。そして、思わぬドラマが進行しました。

 私の勘が働かなかったら、せっかくの松尾氏との出会いは、ニアミスだけに終わっていただろうと思うと、当時の自分を誉めてやりたい気分です。

松尾氏のブログ

踏み絵とガリバー《鎖国日本をめぐるオランダとイギリス》

アマゾンで松尾龍之介氏を検索すれば、数々の歴史書を書いておられ、イラスト入りの生活ハウツー本もあるようです。

最近作は、「踏み絵とガリバー《鎖国日本をめぐるオランダとイギリス》」。

その後気づけば、松尾氏はブログ歴も長く,読み応えのある文章を書いておられます。ブログ 松尾龍之介の「長崎日和」。漫画家であるだけに、時にはこんな愉快な漫画も掲載しています(ページ中ほど)。

「解体新書」
国会図書館デジタルコレクションの解体新書のページ
九州国立博物館のホームページ