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2019-10-26扁炉(ぴぇんろー) その3

「だし汁は捨てない??」

扁炉は、白菜を干し椎茸のだし汁で煮ますが、「河童のスケッチブック」ではおかしなことが書いています。

「干し椎茸50g (水に浸してもどしておく。もどした水はダシが出ているので捨てるのはモッタイナイ。当然これは使う)」

「……水をタップリ注ぐ。そのとき椎茸をもどした水も忘れずに使う」

椎茸のだし汁を捨てないと2度も強調していますが、この場面で椎茸のだし汁を捨てる人がいるんでしょうか

桂枝雀
桂枝雀

私は、また桂枝雀の落語「寄り合い酒」を思い出しました。

鰹節でダシを取ることを指示されたアホが
「出来ました~」と、鰹節の出しガラを持ってくる。
「いや、出しガラじゃなくて、それをぐらぐらと煮た湯はどうした」
「え、あんなもん、いるんですか」

youtube 桂枝雀「寄り合い酒」へのリンク


扁炉の出発点

妹尾河童氏は、グラフィックデザイナーとして出発し、当時の大歌手・藤原義江氏(1898-1976)に誘われて、東京の藤原氏宅で寄宿するようになり、後年歌劇「トスカ」の舞台美術が成功して、舞台、テレビ等での活躍が始まりました。美食家であった藤原義江も妹尾氏の作る扁炉は大好物で、冬になると希望されていたそうです。

以来30年以上、扁炉は妹尾氏とその周辺でだけで、楽しまれてきたようです。

扁炉については「今まで料理などしたこともない中年男がたった一回で覚え……」とありますので、扁炉の覚え立てのころは料理の経験はなかったかも知れませんが、エッセイの中では、奥さんや家族に嫌がられながらも、料理に挑戦する姿が書かれています。

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