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2020-03-08映画の中のコーヒー「カサブランカ」

ひとときの浮き世離れ

映画「カサブランカ」
映画「カサブランカ」

 2020年3月初旬現在、新型肺炎のために、休園休校が始まり、衛生商品が品薄になり、かうひい屋の手元には、「市場では、消毒液はマスクよりも品薄、当社なら特製の消毒薬をすぐにお届けします」と怪しさ満載のメールが届きました。

 状況につられて、新型肺炎関連の記事を書き始めましたが、こういう時こそ,コーヒーの価値を再認識したいと思い直し、映画の話を。

 「ひとときの浮き世離れで鋭気を養い、現実の世界へ再突入」というのが、コーヒータイムの価値だと思います。

映画の中のコーヒー「カサブランカ」1942年

 コーヒー好きなら、映画やテレビドラマでコーヒーが使われているシーンには、思わず目が行きます。時代物ならなおさらのこと、どんなスタイルのコーヒーが描かれているのか、時代考証の真偽も含めて見入ってしまいます(ほとんどの場合、一瞬ですが)。

 ネットでは映画とコーヒー好きな方がいろいろな論を繰り広げていて大いに参考になりますが、映画「カサブランカ」中のコーヒーの話はないようですので、ここで取り上げてみたいと思います。

カサブランカの地図
カサブランカの地図

 映画「カサブランカ」は1942年の作品。第2次大戦中フランスがドイツに敗北してドイツ寄りのヴィシー政権が誕生し、各国に亡命者があふれたころ、フランス領モロッコのカサブランカを舞台に、リアルタイムの政情を映した、連合軍側・アメリカ製のプロパガンダ映画。

 当時のカサブランカは、様々な国からの人々で溢れる状況で、コーヒーは色々なスタイルのものがあったに違いありませんが、映画では異国情緒を感じさせるトルコ式のものが登場します。

数杯用のイブリック

 以前見たときに印象に残ったので、今回改めて探してみました。フェラーリ氏が経営するカフェ「ブルー・パロット」でコーヒーを提供する場面が3回あり、民族衣装系の給仕がコーヒーを持って立ち働く姿が何度も登場して、映像的には重要なファクターとなっています。

 上記の写真は数杯用のイブリック(ジェズヴェ・コーヒー沸かし器)で、盆の上にある盃のような、取っ手のない小さなカップで飲みます。

 イブリックは底の大きさに対して背が高いのが特徴です。

トルココーヒー

 粉と砂糖と水を容器に入れ、小さな火でじわりと沸かしますが、容器の周囲が熱くなって、水の縁がジュッというのは失敗だと思います。そういう意味では、蝋燭のような、アルコールランプのような火でじっくり炙るのがいいのでしょうが、日本のガスコンロの上では容器の周囲が熱くなりやすくて難しいように思います。

ポイント:
トルコ風コーヒーをやってみたい方は、出来るだけ粉を小さく挽いて、またはつぶして、鍋をジュッといわせないように火を入れてみて下さい。少々の粉は味のうちです。

一杯用のイブリック

 昔のコーヒーの参考書では「高位の人には先に注ぎ、下位の人には後に注ぐ。昔のアラビアでは、コーヒーを出す順番で刃傷沙汰になるほどだった」なんて書いていました。上下の礼儀を重んじた話だと思っていましたが、トルココーヒーをやってみれば納得。後になればなるほど、粉がタップリ残って、まずいのです。怒りたくもなるでしょう。

イブリック⇒ジェズヴェ

ジュズヴェ
ジュズヴェ
amazon より

 カリタではトルココーヒーを入れるこの容器を「イブリック」と呼んで販売しています。私もイブリックで覚えていますが、この名前は英語圏から来たようです。最近では同じものをトルコ語でジェズヴェと呼ぶそうです。2011年にトルコのトルココーヒーとその文化が世界無形遺産登録されて、意識が高まったのかも知れません。

映画のあら筋

 カサブランカで、アメリカ人男性リック(ハンフリー・ボガート)が経営するカフェ「アメリカン」に、パリで別れた昔の恋人イルザ(イングリット・バーグマン)が偶然訪れる。イルザの夫はチェコの反ドイツ運動の指導者。亡命を図るも旅券を得られず立ち往生している。恋が再び燃え上がるが、反ドイツの大義に燃えるリックは、イルザ夫妻に闇で得た旅券を用意して、別れを告げ、亡命を助ける。

 この映画の4年前にスウェーデンからアメリカデビューしたイングリット・バーグマンと、ハンフリー・ボガート、ともに代表作となった名作映画。

 この映画の封切り(1942年11月)直前にカサブランカのヴィジー政権は陥落、連合軍側の攻勢が激しさを増します。

 この場合日本は敵国なので複雑な気分ですが、舞台はヨーロッパで、日本に言及がないので、やるせなく美しい恋愛ものとして、日本でも人気のある映画です。